大賞

Sawa Yukio 《おのがすがたを うつしてやみん》

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ステートメント

「対峙すること」は現地に来てみることで思った以上に多くあった。
そして案外、時の流れや状況に応じて流動的であるとも感じた。
那珂湊という土地のフィルターを通して私が対峙したもの。
最終的にそれは、自分自身であった。

当初私が想定していた明確なモチーフは、今となってはもはや外殻でしかない。
しかしその形状が、人々の心に内在しているそれぞれのイメージを想起させることができれば幸いである。

会期中も滞在し、現地に流れる時間の中であらゆる物事と対峙しながら、一つの完成に向けて制作を重ねてゆく。
それは日々向き合いながら増殖し、形を変えてゆくのであろう。

対峙したあとには、一体何が現れるのだろう。
対峙した私は、どんな形を紡ぐだろう。

今、私はこの場所にただ、身を委ねたい。

※タイトルは 「立ち向こう人の心は鏡なり 己が姿を移してや見ん(黒住宗忠)」という歌から一部拝借している。

選評

線を使った表現が、作家がこれまで取り組んできたテーマであったといえるが、今回は流木を組み上げ、巨大な彫刻ともいうべき作品になった。白く塗った流木群は、様々な場所から見てみることで姿を自由自在に変えてゆく。空間を自由に使って作品の見え方を変える手法は作家の得意とするところで、本作でもその特徴がよく表れている。限られた時間のなかで質の高いものをつくっていくことが今後求められることになるだろうが、次の展開に期待ができる作品で、一層の活躍を望んでいる。近隣の方々と協力関係を築きながら作品を作り上げたプロセスについても、「地域との協働」というみなとメディアミュージアムの理念から評価できる点であり、作品そのものの評価とともに、大賞としてふさわしい作品であると判断した。


 

審査員特別賞

石川遊雪 《継ぎの庭》

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ステートメント

生活で使われていた陶器などを金継ぎの手法で再生し、その継ぎ目からは植物が 芽生えている。
床に並べられた陶器たちはその使われてきた記憶と寄り添いながら、ひとつの小さな庭となる。

選評

金継ぎという、本来陶磁器の修復に用いる技術を作品に取り込んだもので、近年作家が制作しているシリーズであり、今回は場所に合わせて作品を多数配置し「庭」をつくるというものであった。器に宿る生活の記憶を、修復する行為によって探りつつ、さらにその修復跡から芽生える花で新たな風景をつくるという意欲的な作品である。発想が独創的であり、ひとつひとつの作品に見応えがあったが、空間としてやや散漫な印象があった。作品に集中できるようにインスタレーションを工夫する余地はあったのではないか。当初の優れた発想を大事にして、躍動感を生かした隙のない作品制作を続けてほしい。


各地域賞

ひたちなか海浜鉄道賞
山口貴司・藤井僚佑《記憶の解像度》

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ドゥナイトマーケット実行委員会賞
43《BANKOKKI》

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那珂湊焼きそば大学院賞
tsugu-mi《in the roop》

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みなとみらいプロジェクト実行委員会賞
田中真帆《あのひとら・気持ちの良い風/あなたのためにあけておいた穴》

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那珂湊本町通り商店街振興組合賞
水戸工業高校美術部《わたしたちの宇宙とぼくたちの銀河》

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ひたちなか商工会議所那珂湊ブロック賞
臼田那智《プラスチック プラクティス プロジェクト》

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まちづくり3710実行委員会賞
楽しいスケッチの会

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おらが湊線鉄道応援団賞
おさむシアター

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総評

難しい条件のなか、様々な困難を乗り越えて作品の制作を続けてきたそれぞれの参加作家に、まずは敬意を表したいと思います。
空間を工夫して自分の思いのままに使っていくこと。これは昨年の審査でも指摘されていた課題でした。この度審査員として全体を見たときに、引き続きこの課題が重要な要素であることがわかりました。そして、その課題をうまくクリアできたかどうかで、作品の評価が分かれていきました。場所に取材しつつ、なおかつその場所に萎縮しない。この両方のバランスが取れていることが大事であり、そういった誠実かつしなやかな作品を特に評価する気持ちで、審査に臨みました。その点、Sawa Yukio氏の作品は、場所と空間を自身の表現にうまく取り込んでおり、大賞として申し分ないといえます。
作品に対する誠実さはそれぞれの作家から感じられたので、気持ちよく審査に臨むことができたことを、ここに付記しておきたいと思います。あとは、取材した成果をもとに、作品の訴求力を高めていくことが肝腎であり、これは全体に共通する引き続きの課題といえます。
今後のさらなる展開を期待しています。

亀海史明

東京藝術大学大学美術館 学芸員
MMM2017特別審査員


過去の受賞作家

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