MMM2019アーカイブ連載 第1回 臼田那智

こんにちは、MMMです。今日からMMM2019参加作家の方々によるアーカイブ連載第1回が行われます!この企画は、MMM2019に参加した作家の方々が、「自分の作品について」や、「実際に展示するまで」を振り返って、毎週金曜日に連載していくというものです!作品を実際に見た人はもちろん、MMMや作家の方々を知りたい、という人は、必見です。

第1回は、臼田那智さん。MMM2019を機に結成した2人組のアートユニット『増田荘は音を出してはいけない』で、“あんこう♡もこもこ♡あんこう” を展示しました。見上げないといけないような巨大なあんこうは、百華蔵やおさかな市場で展示されて、写真の撮影スポットになったりと大盛り上がりでした!

臼田さんは、どのようなコンセプトで巨大で可愛いあんこうを作り上げたのでしょうか?


那珂湊のおさかな市場に佇む、あんこう。

MMM2019アーカイブ連載第1回 臼田那智(『増田荘は音を出してはいけない』)

臼田と申します。私は、2016年度のMMMから2018年を除き、継続し参加させていただいています。
今回は、大学時代の絵描きの友人と共に『増田荘は音を出してはいけない』というユニット名で参加しアンコウの作品を作りました。
2016年に初めて参加して、当時「都内のギャラリーで作品を飾り」「自分の作りたいものを作り」それが「わかる人にだけ届けば良い」と思っていた価値観を、「アートと無関係な人とアートを作ることは、予想外な展開があって案外面白い!」というものに変えてくれたのがMMMでした。
しかし現地に住み始めてから次第に、自分の制作に協力者の手を広げれば広げる程、今まで「アート」を見て知ってきた私と、那珂湊で知り合う「アート」を全く知らない人とのコミュニケーションに齟齬が生まれ、苦労しました。地元民から「なんだこいつ」と思われることもきっとありました。ギャラリーとか美術館とか、アート関係者しかいない場所でこのような苦労は比較的起こりにくいでしょうが、今まで生きてきた土台が明らかに違うからこそ、「(アートのことを) わからないなら、教えてあげる」、そして「(地元のことを) 知らないなら、知ろうとする」姿勢がとても大切に感じてます。
MMMは11年続いていますが、地元民からよく言われるのは「MMMってやってんのかやってないのかよくわからないよね」という意見です。しかし、毎年夏には必ず開催し、参加してから更に飛躍を遂げる作家がとても多い、作品の質は決して低くなく、作品展としては素晴らしいものです。では、なぜ地元から否定的な意見が多いのか。「(アートのことを) わからないなら、教えてあげる」行為、「(地元のことを) 知らないなら、知ろうとする」姿勢が足りていないのだと思います。

「わからないなら、教えてあげる」とは、作品の良さを、表に伝える・届ける、惜しみない努力です。SNSの宣伝然り、作家が会期中現地に赴く、作品のわかりやすい解説を来場者にする、関わった人へ「見にきてください」とはっきり伝える、現地民との会話でたった一言でもMMMを紹介する、などなど。アート系現場の専門用語でもぺろっとコミュニケーションが取れる環境とは違い、私たちが相手にしているのは、他でもなく、アートと一切無関係の那珂湊です。「わからないことを、教える」努力がその地へ向けた私たちの誠意の表し方です。時に無知ゆえの否定的な意見を言われても、言い返すことが誠意です。
同時に、「(地元のことを) 知らないなら、知ろうとする」つまり、私たちの都合をわかってもらうのなら、相手の都合を分かる努力をしなければいけません。お礼をしっかり言うこと(メールではなく手紙を書くなど)、返事をすぐ送る、挨拶をしっかりする、事後報告をしっかりする、何よりも直接会話をすること、などなど、、那珂湊の人は、このような一見して当たり前の、人としての礼儀の部分をとても重んじているので、私もそこだけは守るようにと気を引き締めています。
良い作品が生まれても、このような努力がなければ、そこで作る意味がないのだと、MMMに参加して強く痛感してきました。ならば、作品の身一つでも通用するものを作ろうと思い至ったのが、今回のアンコウでした。「一緒に写真を撮ると幸せになれる」とだけ書いて、難しい解説を一切加えない、地元の名産として那珂湊で通用し、なおかつそれ自体がMMMを宣伝してくれるツールになればいいと思いました。最初からアート寄りの高度なものを作らなければ、説明する手間も省けどんな人にも理解してもらえるよね、といったところです。一方、「アートと無関係の現場で難しい作品つくってそのままにしている」作家の作品、それを良しとする地方の芸術祭に対して、このアンコウ作品を通し異論を唱える形にもしていきたいです。
また、「わからないことを教える」「知らないことを知ろうとする」努力というのは、どのような立場や年齢の違いも越え、平等な関係を築いてくれます。
バックグラウンドの全く違うもの同士が、お互いのイメージを共有し合い、繋がっていけるのがアートの役割であり、偉大なコミュニケーションツールになると信じています。だからこそ、そのような奇跡が那珂湊で起こり続けてくれるように、これからもこの地での活動に励みたいです。


『増田荘は音を出してはいけない

■プロフィール
武蔵野美術大学の日本画学科と油絵学科を2014年に卒業。
大学近辺にある木造アパート『増田荘』を拠点に制作活動を行う2人組編成のアートユニット。
今回のMMM2019を機に結成。互いの作家性をかなぐり捨て、現代に好まれる「バズる」作風を模索していく。

■Webサイト
【Webサイト】https://masuoto.themedia.jp/
【Instagram】https://www.instagram.com/masumto2019/


来週1/24(金)の第二回は、折田千秋さんです。折田さんは、「image picture」をひたちなか海浜鉄道の車窓に展示しました。現在、北茨城市の桃源郷芸術祭でも展示しているんです。折田さんは、作品の制作過程について語ってくれています。お楽しみに!


みなとメディアミュージアムとは

みなとメディアミュージアム(以下、MMM)は、茨城県ひたちなか市ひたちなか海浜鉄道湊線沿線を舞台に開催する地域アートプロジェクトです。 毎年、全国からアーティストを募集し、厳正な審査を経て、出展者と作品を選出します。出展された作品は会期中(8月中、約3週間)、那珂湊の駅やまちなかを中心に、ひたちなか海浜鉄道沿線や車輌内にも展示されます。またワークショップやその他関連事業の運営も行っています。 「産(主に那珂湊地区商店街、ひたちなか海浜鉄道湊線)+学(主に大学教員、大学院生、大学生)+芸(アーティストおよび美術関係者)」の三者からなる実行委員会により運営されており、芸術表現と地域との協働によるまちの活性化を目的として活動しています。 2009年に第一回を開催し、MMM2019では11回目の開催となります。

■Webサイト

【Webサイト】https://minato-media-museum.com/
【Instagram】https://www.instagram.com/minato.media.museum

【Twitter】https://twitter.com/minatom_m

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